設立趣旨
 近年,学校教育を取り巻く環境と教員の役割には,大きな変化がもたらされています。まず,子どもの問題として,不登校,いじめ,暴力,非行,学級崩壊などが噴出しており,早急な対策が求められています。
 加えて,2007年からは通常学級における特別支援教育の充実をはかるための取り組みも実施され始め,子ども個々の心身の発達や学習の仕方を適切にアセスメントし、それを踏まえた指導の在り方の検討が求められています。そしてさらには,日本の子どもたちの学力低下問題を受けて,授業時間や内容の増加などの検討もなされています。
 したがって,これらの学校教育に関連した問題に対応するための,教員や学校関係者のスキル向上に対する社会的な要請も高まっているのではないかと考えられます。実際に,学校選択制度,教師評価制度,教員免許更新制度が導入されようとしており,専門職としての教員への期待の高さを示していると思われます。
 その一方で,教師は他の公務員より早い時期に仕事の負担に耐えられなくなり、早期に退職している実態もあります。児童生徒の個々への対応や学級経営の難しさ,授業時間数の増加などの多忙な学校環境や,保護者や社会からの要請による教師の心理的負担の増大が心身の健康に影響を与えていると考えられるのです。一度,心身の健康が損なわれると,その状況からの脱け出すためには,長期間の休養や医療機関からの適切な援助が必要であり,職場に復帰するまでに長い時間がかかります。これは,社会にとっても、教師個々人にとっても不幸な事態であるため,教員に対する何らかの支援が必要であると考えられるのです。
 このような今日的な課題を受けて、NPO法人実証心理教育研究所では、幼保・小・中・高・大学の教職員・カウンセラー・教育関係者・カウンセリング専攻学生のような教職に携わる成人に対して、幼児・児童・生徒・学生が発達途上に経験する適応,学業,進路に関する諸問題,学級経営などの学校教育に関する諸問題に対する研究・研修事業を行い,教職に携わる成人に対するスキルおよびメンタルへルスの向上を目指した活動を行うことにしました。また,教師を支援することで,学校教育に関わる様々な問題への対応を円滑にすることに寄与し,最終的には子どもたちの健全な発達を促進することを目指しています。